日本人チーム

 

シンガポールに移住した富裕層の移住ビザの更新が出来ない!?

 

このことについて記事を書くキッカケとなったのは、あるクライアントからの一通のメールでした。

 

「シンガポール在住の人から面白い話を効きました。シンガポールの一旦緩和した移住ビザの更新が非常に厳しくなっているといいます。そのせいでシンガポールに押し寄せた富裕層がビザを更新できず、シンガポールから出て行く羽目になっているそうです。節税としてシンガポールに移住したのに出て行かねばならない・・・ということで、香港が次の移住候補地にあがってきています。」※本文ママ一部抜粋

 

なにかと比較される香港とシンガポールですが、勉強不足の私はシンガポールの移住状況をなんとなくでしか把握できていなかったので、これを機にシンガポールのビザや外国人の移住、富裕層の動向について調べてみました。


 

シンガポールの一旦緩和した移住ビザの更新が非常に厳しくなっている件について

 

緩和されていた移住ビザとは?

 

シンガポールは他の先進国同様に少子高齢化問題を抱えており、その打開策として移民制度を取り、就労ビザや永住権の発行に積極的でした。金融危機以後の2012年あたりから、シンガポール国民の就業を守るためビザ取得自体が困難になっていますが、シンガポール政府は2013年1月に下記の声明を発表しています。

 

・・・ここから

 

2013年1月29日、包括的な人口政策「人口白書〜ダイナミックなシンガポールのための持続可能な人口」で、国土利用計画の指針となる下記、人口想定値を発表。

 

・2020年までに580〜600万人、2030年までに650〜690万人への増加を見込む。

・国民の割合:2012年6月時点の62%から2030年には55%へ。

・外国人の割合:2012年6月時点の38%から2030年に45%へ。(永住権保持者、EP、Sパス、WPなど含む)。

・少子高齢化で縮小する人口、外国人移民で補完。

 

(出所:JETROシンガポール

 

・・・ここまで

 

シンガポールの国民構成は(2014年6月末時点)、

 

総人口: 546万9,700人

国民 : 334.3万人 / 61%

永住者: 52.8万人   / 10%

外国人: 159.9万    / 29%

(出所:シンガポール統計局

 

となっています。金融危機以前の状況から人口の推移を見てみましょう。

 

総人口

国民

永住者

外国人

2008

4,839,396(+5.5%)

3,164,438(+1.0%)

478,221(+6.5%)

1,196,737(+19%)

2009

4,987,573(+3.1%)

3,200,693(+1.1%)

533,183(+11.5%)

1,253,697(+4.8%)

2010

5,076,732(+1.8%)

3,230,719(+0.9%)

541,002(+1.5%)

1,305,011(+4.1%)

2011

5,183,688(+2.1%)

3,257,228(+0.8%)

532,023(-1.7%)

1,394,437(+6.9%)

2012

5,312,437(+2.5%)

3,285,140(+0.9%)

533,065(+0.2%)

1,494,232(+7.2%)

2013

5,399,162(+1.6%)

3,313,507(+0.9%)

531,244(-0.3%)

1,554,411(+4.0%)

2014

5,469,724(+1.3%)

3,343,034(+0.9%)

527,709(-0.7%)

1,598,985(+2.9%)

 

状況としては、外国人は増加しているが永住者は減少傾向にあるようです。


 

富裕層移民にとって、非常に厳しい状況に追い込まれた背景とは?

 

前述したように金融危機が原因で、シンガポールで2004年に導入された富裕層向け永住権(FIS)プログラムは2012年4月で中止されてしまいました。廃止された表向きの理由は、GIPスキーム(投資家プログラム:後程説明します。)に似ているから統合させるということですが、実のところはトリクルダウン効果を狙ったけれど、不動産価格の高騰や中国や他国からの「ブラックマネー」があまりに多すぎて、メリットがなかったからだと考えられています。

 

現在シンガポールで富裕層が永住権を取得するためには、労働ビザ(Emplyment Visa, S pass)か投資ビザ(GIP)を取得後、何年かシンガポール生活を経て実績を作った後に永住権(Parmanent Residence)を申請するようです。

 

しかしその永住権取得が相当厳しくなっているようです。

 

「2008年は取得者8万人で取得率は8割だったのが、2009年には6万人で取得率5割、2010年には3万人で取得率3割に急激に低下しています。」(出所:シンガポール永住権取得属性と難化状況 ~PRを取れる人は誰か?~

 

ここのHPに統計データの出所を明らかにした詳細が載っています。2011年からは永住権の申請却下数が公表されなくなったため、取得率が現在どれほどかは分かりませんが、前述した人口推移では永住者の数自体は減少傾向にあります。

 

永住権が取れないということは、富裕層にとって大きな負担となります。なぜならば、節税のためには海外長期移住が必要になるからです。節税目的の移住パターンは大きく分けて2パターンあります。

 

1. 相続税回避目的型:既にリタイアしており蓄財した資産の相続税や贈与税を回避したい富裕層。

2.法人税・所得税回避型:現役で働いており高所得故の悩み。法人税と所得税、またはキャピタルゲイン税などを節税したいタイプ。

 

タイプ1の富裕層であれば、相続税を回避するためには以下のどちらかを満たす必要があります。

 

A. 親と子が5年以上海外に居住している

B. 子が海外に居住し、日本国籍ではない

 

タイプ2であれば、日本ではなく海外で労働ビザ等を取得し居住地で納税し、1年間の内半年以上日本に滞在してはいけません。(実際はタイプ1・2共にもっと細かい条件が必要になってきます。)

 

永住権取得が困難となり、さらにビザ自体の更新ができないという状況は「節税目的」の富裕層にとって死活問題なのです。


 

応募要件及び更新基準が厳しいGIP(Global Invester Program)スキーム

 

廃止された永住権プログラムに代わり、現在富裕層が取得している投資家ビザのGIPスキームですが、この応募要件と更新条件が中々厳しいようです。

 

GIP応募要件のオプション:

 

GIP応募者は次のうちどちらかの要項を選択し満たす。

 

オプションA:

新規ビジネスに最低でもS$250万(約2億円)投資するか、実在しているビジネスのオペレーションを拡大させるか。

 

オプションB:

最低でもS$250万をGIPファンド(シンガポール企業に投資をするファンド)に投資するか。


 

GIP応募者の評価基準:

 

(a)企業としてビジネスの実績が最低でも3年あり、会社の3年分の財務状況の監査を受けなければならない。

(b)もしも保有している企業が不動産または建築関係であれば、直近の年間売上がS$2億(約170億円)なくてはならない。そして過去3年の年間平均売上もS$2億なけれなならない。

もしも保有している企業がそれ以外であれば、直近の年間売上はS$5000万(約43億円)なくてはならない。そして過去3年の年間平均売上もS$5000万なくてはならない。

 

そして一番売上があった財務諸表を提出した方がよい。

 

(c)もしも保有している企業が非上場企業であれば、最低でも30%の株式を保有したほうがよい。そして会社の成長と利益が審査の対象となります。


 

更新条件:

 

GIP取得者にはRe-Entry Permit(再入国許可証)が、最初5年間発行されます。最初の発行から5年経過した後にこの再入国許可証を更新するために、下記の条件を満たす必要があります。

 

a)3年更新の場合

 

1. 応募要件のオプションAもしくはオプションBを満たしている必要がある。

2. さらに下記2つの条件どちらかを満たしている必要がある。


2−1 シンガポールに設立させた会社に5人以上シンガポール人を採用している、そしてビジネスの経費を最低でも年間S$100万(約8500万円)使用していること。

2−2 GIPでビザを取得している本人または配偶者が年間で半年以上シンガポールに滞在している必要がある。


 

b)5年更新の場合(下記3つの要件を全て満たす必要がある)

 

1. 応募要件のオプションAもしくはオプションBを満たしている必要がある。

2. シンガポールに設立させた会社に5人以上シンガポール人を採用している、そしてビジネスの経費を最低でも年間S$100万(約8500万円)使用していること。

3. GIPでビザを取得している本人または配偶者が年間で半年以上シンガポールに滞在している必要がある。

(出所:Global Investor Programme


 

今富裕層がシンガポールに移住するのは条件が厳しい

 

長々とビザ取得及び更新の条件を書きつらねましたが、そもそも永住権が取得できない上に、ビザ更新自体が難しく、ビザ更新が却下された理由が曖昧で不明瞭な場合が多いようです。

 

また仮に住み続けることができたとしても、来年の総選挙の関係もあってかシンガポールでは富裕層へ増税傾向にあるようです。シンガポールの国税庁(IRAS)は不動産投資に係る固定資産税の増税と、2017年から個人の所得税の最高税率が22%に引き上がることにより、法人税率17%の法人(シェルフカンパニー)を使用した租税回避行為の監視強化を発表しています。

※その2に続きます。
 

<参考リンク>

※ ICA(Immigration & Checkpoints Authority)

 


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