Hiroaki Tsuda

日本国弁護士の津田宏明と申します。香港に投資される日本人の方に関係しうる法律問題について簡単に紹介していきたいと思います。

 

経済のグローバル化がますます進んできた昨今、企業だけでなく、個人のレベルでも海外投資が身近になってきております。そのような中、金融都市香港で銀行口座を開設され、資産運用をされている日本人の方も年々増えております。

 

では香港で積み上げた資産は、みなさんがお亡くなりになった後はどうなるのでしょうか? 単純に、以下のような疑問があるかと思います。

 

     ・香港に残した資産をきちんと家族が使えるようになるか?

     ・香港に残した資産を誰に引き継がせるか?

     ・万が一に備えて遺言書を書いたが、それで充分だろうか?

 

日本の銀行口座や金融資産であれば、日本の法律に従い、遺言書があれば遺言書の内容に従って、遺言書がなければ相続人間の遺産分割協議を行った上で、銀行口座を誰かに引き継ぐなり、口座のお金を引き出して分配したりすることができますね。

 

では香港にある銀行口座も、日本と同じように相続人が銀行に連絡して、引き出すことができるでしょうか?

 

残念ながら、仮に相続人全員が印鑑を押した書面があっても、それだけでは香港の銀行口座からお金を引き出すことはできません。

 

当然のことですが、日本と香港では法律が異なり、相続に関する法制度も銀行実務も全く異なります。

 

香港の銀行は、日本の法律に従ってサービス提供しているわけではありません。日本の銀行と同じように、戸籍謄本を揃えて相続人全員の印鑑を押した書面を持っていったとしても、そもそも戸籍謄本が確かなものとして扱ってくれるわけではなく、また、日本の法律に基づいた場合に口座名義人の相続人が誰であるかも判断できるわけではありません。

 

香港の銀行に対して相続人に口座を引き渡してもらうには、香港の法律に従って、香港での適正な手続きを踏む必要があります。

もっとも、その法律や手続きの仕組みはそれほど単純なものではありません。

手続きを行うのはあくまで香港ですので香港の法律に従うのですが、肝心の「相続人は法律に従うと誰になるのか?遺言書が適法に成立したものかどうか?口座名義人の財産を管理する権限があるのは誰か?」という点については、亡くなった方が日本人である以上、いずれも日本の法律に従って決めることになります。

 

つまり、香港の銀行口座の相続手続きを行うには、香港の法律と日本の法律の両方が関係してくることになるのです。しかも、香港は英国領の頃から現在に至るまで英米法の法体系を有するのに対し、日本はドイツやフランスの流れを汲むいわゆる大陸法の法体系であり、相続法の仕組みはかなり異なります。

 

また、そもそも、香港の銀行口座の資金を引き出すことができるとして、その存在を相続人の誰かが把握できるのか? お金は相続人の誰がもらえるのか?という点も問題になります。

 

せっかく香港に投資をして大きな財産を家族に残したとしても、そのお金は誰のものになるかということで家族の間で紛争になってしまっては、亡くなった方も無念でしょう。

 

次回のコラムでは、お亡くなりになった方が香港に銀行口座を持っていた場合、どのような手続きを行う必要があるのか、今投資をされている方は、残される家族のためにどのようなことに気を付けていたらよいのか、等についてお話していきたいと思います。

 

 AMGリーガルアドバイザー
 弁護士 津田 宏明
 熊谷・田中・津田法律事務所パートナー
 TEL: 03-3584-5986
 E-mail: hiroaki.tsuda@kttjapan.com
 WEB: http://www.kttjapan.com/

 

<プロフィール>
2002年10月弁護士登録(第一東京弁護士会)/2002年10月あさひ・狛法律事務所入所(現西村あさひ法律事務所)/2004年10月近藤丸人法律事務所入所(第二東京弁護士会に登録換)/2008年7月北京語言大学(漢語進修生)/2008年9月(~09年8月)香港中文大学ロースクール(LLM)卒業/2009年1月 Robertsons Solicitors(香港)勤務/2009年9月(~10年8月)上海市協力律師事務所・広東君信律師事務所勤務/2010年9月近藤丸人法律事務所復帰/2014年3月熊谷・田中・津田法律事務所に参画/2015年よりAMGリーガルアドバイザー

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主な取扱分野
渉外法務、倒産・事業再生、外国企業による対日投資、訴訟紛争、一般企業法務

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